君道を誤る給うなかれ

学部生のときの中学実習をふと思い出す。

5月だったな。受験年である中3に入った。

 

ぼくが担当したクラスには、

定期テストや実力テスト(いわゆる外部発注テスト)で

すんごい点数が良くて、学年順位も常に上位に入っている子がいた。

 

生活ノート(クラス全員とする交換日記的な)や普段の会話で

「私、工業高校行きます。」

と言ってきたもんだから、えぇぇ!と驚いた。

 

なんでそんなに点数高いのに普通科進学校行って

地元の国立大学を目指そうとしないの、と。

 

はっきりとした理由は忘れたけど、工業系が向いていると彼女自身自覚していた。

 

だったら、大学でそれをさらに磨けばいいのに、とか

大卒の方がまだ就職は有利だよ、とか

言って少しムキになって説得しようと試みたが、

実習生の身分で他人の人生に足を突っ込みすぎるのもイカンと思い、やめた。

 

でも、あの子の選択は間違ってなかったと思う。

トップ大学ならまだしも、普通の国公立大学行っても、

ブランド力は弱いから、企業もそれだけじゃ採用も渋々だろう。

 

それに、大卒でも非正規採用就職なんて半分近い割合だというのに。

 

あと、すんごい優秀じゃない限り授業料・入学金は免除されないから、

専門学校行って、何かしら有効な資格を取って就職した方が

生涯収入は大卒者より上かもしれない。

働き始めるタイミングが違いますからね。

 

工業化社会思考の呪縛に囚われていたあの頃の自分が、

今は少し遠い存在に思えてきて、なんだかうれしい。

それだけ自分が変わったんだなと。

逆に、当時は恐ろしい思考をしてたなと。

 

そして、あのときのぼくのアドバイスを真に受けて

進路を大きく変えようとしなかったあの生徒。

 

その選択、間違ってなかったと思うよ。