『科学革命の構造』を読んで

この本ですが,結構背伸びしました(笑)

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「『学び合い』を世界中に広めるためにこういうことを考えてるんですよね~」

という案を西川先生に出してみたのが先月の話。

その対話の中で,「トーマス・クーン」「パラダイムシフト」

の二つの言葉が西川先生から出てきて気になり,

図書館で借りてみました。

 

科学知識が疎い文系型人間にとって,

難しい専門用語がいっぱいでてきて,挫折しかけました。

ただ,『』の変遷,イノベーションの構造,キャズム理論等とかすっている部分・重なっている部分がちょくちょく出てきたので,なんとなくは納得できました。

あと,西川先生との対話のおかげでもある。

まずはじめに

この本で言うところの「科学革命」について説明してみます。

通常科学という,その時代にもともとあった常識的な事実がそれだとします。

でも,時間が経てば,どこかの段階で不具合が生じます。

「あれ,この場合だとちょっと当てはまらないなぁ..」

のように,ある場面で,今まで自然に存在し,働いていた理論が調子悪くなるときがあります。

 

そりゃそうです。

通常の研究のために設計,組み立てられた一片の観測機械なわけですから,予期したように働かなくなり,何回繰り返しても専門家の期待通りの結果にならず,ついには変則性を生じることになる。。

こういう状況では,その通常科学というものは混乱してしまいます。

 

専門家たちが,既存の科学的伝統を覆すような不規則性を避けることができなくなったとき,新しい種類の前提,新しい科学の基礎に導く異常な追求が始まります。

 

つまるところ,その追求により,専門家たちに共通した前提をひっくり返してしまうような異常な出来事こそ,科学革命なんだそうです。

いわば,伝統を断絶させるもの。

 

 

パラダイムシフトとは

そういえば,ぼくがこの本を読むきっかけになったパラダイムという言葉ですが,どういう意味かといえば,

ある時代や分野において,支配的規範となる「物の見方」や「捉え方」

のこと言います。

 

ただ,

パラダイムシフトも終結(不発)するときがあります。

・既存の科学技術がその問題を究極的に扱い得るとき

・問題が革新的な新しいアプローチさえも拒否すること

(自分らの現状ではどうしても解決できないから,未来に託す意味で放置すること)

・新しいパラダイム候補が現れ,続いてその受容をめぐっての争いが勃発するとき

この3つのどれかに当てはまると,スムーズにシフトできないと言われています。

 

 既存のパラダイムを科学者がなんとか整備して,直面している問題に立ち向かおうとしても,うまくいかないときにしか,新理論を生じさせることはできないということです。

 

 

西川先生の言葉で簡潔に

この本を読んでて,常に心の中にあったのは,

「なんとなく言いたいことはわかるんだが,言語化できないなぁ」

でした。

難しく考えてしまうと,もう底なし沼にハマった感覚に陥り,

脳内で複数の神経が絡み出します。

 

そんなとき,西川先生は,パラダイムシフトの構造を,

宮城県幸島のサルを引き合いに出して,簡潔に説明してくれました。

 

幸島と言えば,「芋洗い行動」をするサルで有名です。

京都大学の研究者が,1952年に,その島にいる二ホンザルへの餌付けに成功したことから話は始まります。

 

あるとき,彼ら研究者は,芋を与えてみました。

比較的若めのサルにです。

 

貰うや否や,海に芋を落とし,洗い始めたんです。

で,そのあとに食す。

汚い泥を落とせる上に,ミネラルも摂取できる。

当時のそのサルコミュニティでは革命的だったのでしょう。

 

結果的に,その行動は広まりました,一部の年代を除いて。

 

その年代とは,老ザルです。

保守的である上に,塩分過多によって死ぬことを知っているため,

その流行に乗らずに寿命が来てしまう。

ゆえに,その世代では誰もやろうとしない。

ただ,若者世代の後世にはその流行が文化となり,残り続ける。

その世代が子を産み,時間が経ち,その子も子を産み..

 

最終的に,時代が移りゆく中で

パラダイムシフトが起こっていた,というわけです。

 

人間界もそれと一緒です。

 

 

結局,パラダイムってのは,

当事者同士(賛成派・反対派)の論争では解決するものではなくて,

その両者の間に位置する中間層(賛成でもあり反対でもある人)が,

「どっちが有効かを判断し,どっちに移るか」で決まります。

 

 この本のどこかのページにあった言葉,

 「世界はパラダイムの変革と共に変わるわけではないが,

 その後の科学者は異なった世界で仕事をする」

 

がすべてを物語っているんだなぁ。