ガールフレンズ・ペアレンツ・ドッペルベンガー
不思議な体験の話,させてください。
おととしのある夏の昼,アルバイト先のレストランで,
いつものようにせっせと接客なり料理の配膳をしていた。
ランチのピークを終え,客足も途絶え始めたころ,
一旦,裏(キッチン)へいき,皿を洗ったり,拭いたりしていた。
ひと段落してからまた表へ出てみたら,背中に冷たい汗が流れた。
二人掛けのテーブルに,見覚えのある二名が座っていたのだ。
ぼくの”恋人のご両親”でした。
この瞬間に遭遇する2カ月前に,恋人の実家へ行き,挨拶を済ませていて(このときはまだ婚約はしていませんでした),お互いの顔は認知していました。
実家へ泊ったものの,顔を合わせて談笑したのは晩酌・朝食含め3時間程度だっため,ぼくは「なんとなく」しかお二人の顔を記憶していませんでした。
でも,明らかにご両親でした。
ぼくが働いている場所は,会話の中で教えてなかったので,
「なんとまぁ偶然」なんて思いながら,粗相は許されないとド緊張してました。
と言っても,「激似のご夫婦だろうな,きっと」と心のどこかで思っていたので,リラックスして,料理を運びました。
ただ,いざ至近距離で見ると,激似というか,なんていうか,,
ご両親でした。
もう,「そのまんまご両親」でした。
ただ一点引っかかる点があって,
「なんか生気が感じられないなぁ」
という雰囲気がありました。
他のお客さんは普通なんだけど,
そのご両親(仮)だけ,直感的に暗いなぁなんて。
オーラが,なんて言ったら胡散臭いのでこれ以上はそのことについて言及はしませんが。
んー,と唸っていたら,
気づけばお会計を済ませ,お店を出ていました。
そんなことがあったんよね~,と仕事終わりの恋人にLINEすると,
「日中は二人とも仕事してたし,そもそもこのド平日に上越まで行かない(笑)」
と返されました。
そりゃあそうです。
実家から上越まで高速で2時間ほどかかる上に,その日はド平日。
ありえないんです。
じゃあ,激似の別人かぁ,と片づけたいのだけど,
納得できない自分がいて,今もモヤモヤしています。
2年前のことなのに。
チキンなのでできませんでしたが,あと少しで,
「この間はお世話になりました,今日はどうして上越へ?」
と気さくに話しかけるところだったので,危ない危ないと思いつつも,仮にもし話しかけていたらどうなっていたのか,冒険心が今更芽生えてる。
ドッペルゲンガーという言葉がある。
自分自身を第三者目線で目撃する現象。双子や自分と顔が似ている他人に対しては使われず、あくまで自身の分身と遭遇した場合にだけ用いられます。
今回は他者だから,これとはちょっと違うんだろうけど,
でも仮にもし,ご両親(真)が,ご両親(仮)と鉢合わせしていたら,どうなっていたんだろうかと思ったりもしてみる。
迷信だと,死ぬなんてことも聞くから怖い怖い。
自分に置き換えれば,
ぼくの分身が今日もどこかで生きているのかなと思う。
本物のぼくよりすごい実績を残していて,
周りから認められている存在だとしたら,甚だ劣等感を隠し切れない。
私以外私じゃないの
と言いたい。