ところで,あの靴は何処へ?

これは去年の話。

所属していた研究室が大きめな教育イベントを企画した。

まあ,毎年恒例なんですがね。

 

全国からいろんな人が上越へ来る。

そこではいろんな出会いがある。

イベント後は,打ち上げとして大きめの居酒屋に行く。

飲んでは食べて、騒いでは話して、そんな2時間を過ごした。

 


気分がいいまま、さて、二次会にでも行くかとなり、下駄箱の方へ向かった。みんな自分の靴を取って履いて出口へ向かう中,ぼくは焦っていた。

 

そこにあるはずの自分の靴が見当たらなかったのだ。

 


トイレも探したし、他の下駄箱も探したのだけれど、

一向に見つかる気配がない。

 


誰かが間違えて履いていったのなら、

間違って履いたその人の靴はどこかにあるはず。

ええい,そいつのを履いてやろう、

と思ったのだけれど,それらしい靴はなかった。

 


犯人は故意的に,あるいは酔いの勢いで持ち帰ったのかもしれない。

おそらく,別の団体のお客さんに。

 

自分の靴とぼくの靴を効率よく持ち帰る,

つまり両手両足の四足歩行人間になって帰ったとしか考えられない。

だとしたら,絵面がシュールすぎて,

ぼくは好きだから許しちゃうかも。

 


ただ,その靴は、大学を卒業する前にアウトレットへ行って、ファッションセンスのないぼくに恋人が選んでくれたものだから,思い入れがある靴だったのになぁ,とやるせない気持ちだけが募った。

ぼくには地団駄しか踏むことができませんでした。

 

12月入る直前の地面は,靴下1枚では冷た過ぎた。

 

他のゼミ生のお迎えのためにやってきた同期のゼミ生は,同情からか,「靴はないけども,これなら..」と,なぜか車から黄色い分厚い靴下を取り出し,ぼくにくれた。

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なんでたまたま車の中にこんな靴下があったのかはわからないけれど,ありがとうとしか思えなかった。

 

でも,「笑い話になるなら!」「これでウケるなら!」とポジティブに捉え,その場は気持ちをコントロールして,二次会会場へ。

街の人々の視線は,結構きつかった。

 

よし,いじられるぞ!と思っていたのに,二次会の居酒屋スタッフを含めた二次会メンバーの7割に気づかれることもなければ,イジられることもなかったし,話題にも出てこなかった。

 

世の中そんなもんですよね。

「これはウケる」と事前に予想したものは,

だいたいは不発で終わることを改めて経験したから,

今後の人生に生かしたい。

 

それにしても,ぼくの靴はどこ行っちゃったんですかね。

ネットでめちゃくちゃ安く売り飛ばされてるのか,

間違って履いていった犯人が,朝になって

「うわ!なんだこれ!」て捨てたか,

 飲み会近くの空き地に脱げ捨てられているのか。

 

だれもわからない。

 

靴自身も驚いてるんじゃないかね。

 

あれ!ご主人様の足じゃない!誰!

え,なんで捨てられたんだ..!

と。

 

感受性豊かだから,いろいろ考えてしまう。

 

だから,その靴に替わる新しい靴を,

未だに買えないでいる。

 

未練タラタラ野郎だから,アウトレット行って,同じ値段の,同じロゴの,同じデザインの靴を,ぼくは血眼になって探し求めるだろうな。

 

恋人が選んでくれたからここまで執着してるのか。それとも,あの靴そのものに執着しているのか。どっちなんだか。