不変が不変じゃなくなる
中1のときの担任をふと思い出す。
当時は30代半ばくらいだったかな。
モデルと見間違うほど身長が高く,
端麗な女性だった。
それと独身だった。
生徒はみんな無邪気だったから,
「先生って結婚しないんですかー?」
と当たり前のように聞く。
「かわいいセクハラ」なのか,それとも「胸に突き刺さるセクハラ」だったのかはわからないけど,あのときの先生,グイグイ聞いてごめんね。
で,その手の質問には慣れているのか,
先生は決まって,
「私は一生独身を貫くよ!タイミングを見計らって,
いずれは長野県のどっかでひっそり暮らそうと
思ってるんだよね。独り身は楽だよー」
と言っていた。
それでもぼくが中学を巣立つ頃には,
結婚もし,卒業式のときにはお腹も大きくなっていた。
先生の「一生独身マニフェスト」に
妙な魅力を感じていたのに,
結婚・妊娠がわかったときは,
嬉しさもありつつ,
「あぁ,人間そうは言ってもね。。」
という,変な残念感で満たされていた。
勝手に「あ~ぁ」と項垂れていた当時のぼくも同時に思い出す,そんな思い出。
もしかしてぼくも,これから出会う未来の生徒に,「あ~ぁ」と密かに,勝手に,項垂られてしまう発言をぼくはしちゃうんじゃないか,と思ったりもする。
「朝はコーヒーとサラダ,夜はサラダと胸肉。これが俺の毎日の食事スタイルで,これからも変えないつもりでいるよ。」と,勤務校の一人の生徒に話している。
「変わってる人だね」というような目で見られるけど,
変わってる=褒め言葉=賞賛,憧れの目
と捉えているから,勝手に舞い上がってる。
でも,なんかの拍子で,この習慣を「やーめた」なんて言い出して,朝も夜もがっつり炭水化物を摂取し出したら,その生徒は昔のぼくみたいに「人間,そんなもんだよね」と思うだろうね。
もっと言えば,「均質の基礎学力なんてありゃしないよ」と常日頃言ってるのに,いきなり「基礎学力って実際大事だよね」となんて言い出したりしたら。
「『人とのつながり』がこれからの人生でめちゃくちゃ武器になるよ」と言っておきながら,「自分の力だけを信じて未来を切り開け」なんて言い出したりしたら。
もちろん,今は「不変の意志」を伝えているつもりだ。
でもあの担任もぼくと同じように,確固たる「不変のマニフェスト」を伝えていたはずだ。
でも,結局あれは不変じゃなかった。
ぼくもそのうち,その事例の一つになる気がする。
不変って,難しいね。