バズりたかった君

小学校の頃、「心霊ブーム」が巻き起こった。

 

学校ってほら、「出る場所」と言われるくらい、

ある意味、大衆向けの心霊スポットじゃないですか。

 

学校の怪談というワードがあるくらいですから。

 

そんなぼくが通ってた小学校でも、

心霊ブームが起きた。小5の時かな。

 

一人のクラスメイトが「視える」と言い出してから(実際は視えてなかったはず)、一気に高学年(小5・6)の主に男子勢のテンションが上がり、塩を盛ったりする「お祓いごっこ」や暗い学校の「心霊ツアー」が定期的に行われた。

 

学校の先生もこれを問題視し始めた。

 

だって、音楽室のピアノにがっつり塩が盛られてたし、体育の授業中、視えないくせに新たなクラスメイトが「今幽霊が天井から降ってきたから避けたぜ!」とか「ステージの上にアイツ等の卵あるよね?」みたいなこと言い出すもんだから、なかなかカオスな時期が続いちゃったんですね。

 

#いや卵ってなんだよ

 

でもそのブームは3週間くらいで終わっていた気がする。

 

先生が「もうこんなことやめましょうね。」

と火消しに走ったこと。

そして、所詮、学校と言う小さな世界で起きたブーム。

時間の問題に過ぎなかった。

 

そういえば、最初に視えると言い出した子の人気も、徐々に静まっていった。批判が殺到したというわけでもなく、自然と消えていった。

目立たなくなった、といえば良いのかな。

 

あのときは本当に芸能界のブームやトレンドと似た感じだった。

 

あの子を一人の芸能人に例えるなら、

「バズり」に成功はしたけど、

「キープ」はできなかった人

になるのかな。

 

でも今ならあの子がなぜ「視える」発言に走ったのか、わかるかも。

シンプルに「周りから注目されたかった」のかもしれない。

 

クラスの誰にも自分の「取り柄」「売り」を見つけてもらえなかったら、そりゃあバズり行動に走るのもなんら不思議じゃない。

注目されたい欲求って人間にはあるから。

(そういえば、日常的に問題行動も多かった気がする)

 

わざわざそういう行動に走る方が労力を使うよね。

 

「この子の特技、すごっ」

「この分野はあいつが得意だったよなぁ」

と子どもたちがそれぞれの取り柄・売りを認知している状況さえ出来上がってれば(そうなる環境を授業に落とし込んでれば)、自らスポットを当てなくても済んだのになぁ、と過去を振り返る。

 

まあ、でもそういう環境整備をしていたとしても、

心霊スポット巡りはしてたかぁ。

 

あのドキドキハラハラゾクゾクした状態ではしゃげるのは、人間の生得的な快感に思えるし。

ただ、教師になった今、正直それを生徒にはされたくない。

わかる、めちゃくちゃ楽しいのはわかる。

 

でも、教師になってからわかったことは、

「いや、怖いからやめて。君らのせいで本当に集まってきちゃって、なんならぼくも意識して仕舞には視えてしまうからやめて」かも。

今の勤務校ではそういうブームは来なさそうですが。

 

視えたらネタにはなるけど恐怖体験という心臓に悪い時間を過ごす必要が出てくるので、それはだいぶマイナスな気がしてならない。