鍵当番最中にノスタルジック
小さな特別支援学校なもんで、警備員は雇わずに、先生方・事務の方が輪番制で鍵当番を担当している。
30分程度で終わる鍵当番。
普段閉まっていなければいけないドアが開いてたらマスターキーで閉める。
窓が開いてたり、鍵がかかっていなければ閉める。
小さな学校を一人でまわる、そんな月1の仕事。
高校勤務だとこんな当番はきっとないはず。
もしかしたら小中にもないもんなのかね。
1年目のときは、「戸締りという重大な仕事を輪番制って荷が重いな」なんて思ってたけど、コツさえ掴めば締め忘れはない。あってもたまーにあるくらい。
「ここだけは」てとこは管理職が最後学校を出るときにやってくれてるんで、気楽ではある。
そういえば今日、昨年度まで自分のための「作業部屋」、そして「他の教員たちとの駄弁り場」として使っていた空き教室に、久しぶりに入った。
今はもう、ほとんど誰も利用していない部屋。
その部屋を使う該当教科もなくなったため、生徒も出入りしていない。
入った瞬間、去年まで日常的に浴びていた匂いが、ブワッと鼻や目や毛穴、心の奥に入ってきた。
その瞬間、「ノスタルジック~」と胸がなんだかどんよりした。
昨年度まで、ぼくはここで、親しい教員らと一緒に、空き時間に楽しいおしゃべりをしていた。みんな、自分より年上だ。
ゲラゲラ笑うような会話だった。
でも、親しくしていた教員はみな、
別の学校へ異動になった。
それに伴い、
もうこの部屋には
来る用がなくなった。
でも、久々にあの楽しいときの匂いが体の中に入ってくると、「あの頃はね、」と自分の中で思い出がよみがえる。語り部が、勝手に語り出す。
そして、無性にやるせない気持ちになる。
10分でもいいからあの頃に戻ってみたい感情でいっぱいだ。
過去は振り返るなというけれど、たまにはね、ぼくはアリだと思うよ、せめて記憶だけども。