学校現場でのアンカリング

ビジネスではよく「アンカリング」という,ちょっとキャッチ―でカッコイイ言葉が使われます。どんなものかと言えば,

「人は金額,条件,枠組みを相手に先に提示されると,それを基準に物事を考え進めていく」現象ですね。

 

日常で例えるなら,お店での「値切り」のときとか,わりとこのテクニックが使われているような気がするなぁ。

 

ほら,無理難題というか「格安」を通り越した値段をお客さんが無茶ブリ(要求)すると,店員さんが「いやいや,それは困ります(汗)」と,慌て出すシーン。

 

で,そのあとに,お客さんの方から「残念。それでしたら,OO円はどうですかね..?」とガクンと値段を下げて(なおも高いが),店員の心に弛みを生ませ,そこから徐々に徐々に目標金額に近づけ(値切っ)ていく。

巧妙だけど,立派な戦略ですね。

 

 

でもこれって,学校現場でも起こりうることなんですよ。

 

例えば,下火になりつつあるように思えて,

実はまだまだホットな部活を例に取り上げてみましょうか。

 

春先に,「今年は17時には活動を完全に終了させる!」という契約を職員と交わした部活動顧問がいたとしましょう。ただ,『嫌々,仕方なく』という前提で。

というのも,去年までは19時まで活動していたのだけど,他の教員や管理職から,規制の声があったという裏事情があったと設定します。

あと,その部活動は,その顧問だけで運営されているのではなく,6~7名の複数の教師も運営に携わっているという設定も付け加えよう。その顧問以外,みんな「嫌々参加」です。

 

でも,時間が経つと,ふつふつと部活動大好き人間のその顧問は,思うわけですよ。

「さて,どうやって前の状態に近づけようか..?」と。

「17時終了」に納得しているわけないんですね。

 

何としてでも,多少の妥協はあっても,

限りなくビフォーに戻そうと働きかけるんです。

例えば,不意に活動時間を拡大したりします。

もちろん,どの教員も「え?聞いてないんですが..?」状態。

つまり,誰にも相談・宣言なしにやっちゃう。

めちゃめちゃ無茶ブリなんですね。

あからさまに不自然だけど,

なんだかナチュラルにそろーっと活動時間を延ばす。

 

「不満」で占められた職員室はもちろん管理職に相談しますね。

「やばいっすよ,あの先生。勝手に..」と。

 

自然な流れで,「こりゃ,一旦会議だ。」という方向へ。

 

その会議の場できっと,そのその顧問さんは,

アンカリングをするはずです。

 

まあ,もういきなり契約違反をしてるんで,他の教員らの中には,「今の状況,すんごい最悪」という共通認識があるんですね。

そのときに,もしその顧問さんが,

「おーし,わかった!聞いてくれ!じゃあ,これはどうだ!18時には完全解散にしましょう!それでしたら,良いですよね?」

と条件を提示したとします。

それに対して,

「前よりはマシになったから,ひとまずはいいか..」

と他の教員らが折れると,もうアンカリング成立で,

顧問さんの完全勝利ですね。

 

その条件を飲み込んで,裁判(会議)を閉廷してしまったら,もうそこから今後立て直すことは結構厳しくて,「18時終了」が文化として根付いてしまう。

 

「とりあえず今はいいか。今後,17時に終了するようにリクエストすればいいしね。少ーしずつ改善していこう」なんて呑気なこと考えてたらもうその時点でアウト。

 

いざ,リクエストしたところで,

「え?でもあのとき了解したじゃないですか?」

と逆に詰め寄られ,グーの音も出ないんすね。

 

アンカリングされる前に,

「いやいや,前提がおかしいでごいすよ。そもそも勤務時間,17時までなんで。」

ときっぱり相手を突っぱねるのが最善策なんですね。

 

 

まあ,勤務時間外まで部活やるんだったら,

まずは教員間で合意形成をはかるべきなんです。

あ,生徒も交えてね。

 

反対派を押し切って動き出すのが間違いなんですよ,だって勤務時間外と言う「ルール違反」ですもん。

 

合意形成ができない,それでもやりたいなら,

自分でなんとかすべきなんですね。

 

利己心は結局,犠牲しか増やさないのかもね。

 

なーんて,部活についての持論を展開。